第26回 肝臓の健康を考える~肝臓の労わり方~

2010年4月更新分

今回の健康トリビアは春の健康情報として相応しい「肝臓」についてお送りします。ぽかぽか陽気に・・・昼も夜もお酒が美味しく、お花見などのお誘いも多くなることでしょう。また、日も高くなりますから夜更かししがちに…。細菌やウイルスの活動も旺盛になり、解毒・排毒の役割を担う肝臓への負担が大きくなります。更に東洋医学では、1年の中で春は最も肝の気が衰えるとされていますから、肝臓に自信がある方やお酒をお召しにならない方も注意が必要です。気づかず放っておくと五月病や鬱などの引き金になるかも知れません。

【肝臓のお話】

まず、基本的なお話からしてまいりますね。肝臓は右の肋骨の中にあり、臓器の中でも最も大きいとされており、1~1.5kgあります。通称「沈黙の臓器」と呼ばれ、痛みなどが出にくい為に病気の発見が遅い臓器です。「痛い」というとあまり良いイメージはありませんが、痛みを感じるというDoctor pushing a human liver out of a martini glassの写真ことは大変重要です。痛みがないということは、私たちが継続的に不摂生をしても文句ひとついわず黙々と仕事をこなしてくれるということです。こうなると、たまにこちらから機嫌をとらないといけません。ここで前書きで触れた「五月病」との関連性について触れてまいりましょう。

【肝臓と心の関係】

中医学では肝臓を精神作用との関連が強い臓器として重視されており、イライラする、気分がふさぐ、胸やわき腹が張って苦しいなどのストレスからくる全身症状を「肝鬱気滞」と呼び、気が滞っている状態ととらえます。肝臓は血の貯蔵庫でもありますから、血液中の老廃物が増えることで精神状態が不安定になることは十分に考えられます。このように春に肝臓のケアを怠り、更に環境の変化によるストレスやアルコール過剰などの影響を上乗せしてしまうことで結果、5月~6月頃症状として現れるということです。毎年その頃は倦怠感が強いと自覚がある方は、肝臓の健康状態に注目すると良いでしょう。ここで一度、肝臓の働きを簡単にまとめましょう。

●合成機能
肝臓は食べ物から吸収されたたんぱく質や糖質、脂肪などの栄養素をからだが利用しやすい形に分解、合成するはたらきをしています。酵素や胆汁なども肝臓でつくられています。

●解毒機能
食べ物や体内で発生する毒性の物質などを処理し、無害な形にして排出します。腸内細菌がつくり出すアンモニアを尿素に変えて外に排出したり、アルコールや薬剤、体内で生産されたホルモンなども分解して排泄します。

●貯蔵機能
過剰な糖質をグリコーゲンに変えて貯蔵し、必要に応じて各臓器に送り届けます。

さて、肝臓の様々な役割をお分かりいただいたところで、ここからが本題です。

【肝臓の労わり方】

実践その1.【宴会対策!肝臓をいたわるお酒の飲み方】

※アルコール性肝障害は女性ほど重症化しやすいと言われていますので女性は必読です。

桜の下でビールを飲む女性の写真●一晩に飲む量の上限
・日本酒は2合まで
・ウイスキーはダブルで2杯まで
・ビールは大びん2本まで。
・ワインは80ミリリットルのワイングラスで3~5杯まで
・焼酎は1合~1.5合まで

●濃いお酒は薄めてから飲む
ウオッカやブランデーなどの濃いお酒は肝臓に悪いだけでなく、胃の粘膜損傷を起こしたり下痢などの原因になります。また、食道粘膜を荒らしてタバコなどの発がん物質の浸透を促進します。
●急性アルコール中毒の原因になる一気飲みは厳禁。楽しみながらゆっくり飲む
●おつまみは、肉や野菜など、たんぱく質やビタミンが豊富なものをバランスよく
●週2日は「休肝日(きゅうかんび)」にして、アルコールを一切やめる ※最低2日連続で休む

お酒が強い=肝臓が強いではない?!
酒が「強い」「弱い」というのは、アセトアルデヒドを処理する酵素 (アルデヒド脱水酵素)を多く持っているかいないかの違いであり、肝臓が強い弱いとは無関係です。この酵素を持つ量は遺伝的に決まっています。日本人の約半数がこの酵素を持っていないとされています。悪酔いをして顔が赤くなったり、頭痛や吐き気、嘔吐などは肝臓機能に関係しているのではなく、酵素があるかないかで決まっているということですね。

実践その2.【毎日の生活の中で肝臓をいたわる】

●高たんぱく・高カロリーに注意age fotostock 58106384の写真
高たんぱくや高カロリーになると脂肪肝になりやすくなり、また体内のアンモニア濃度も高くなるため解毒器官である肝臓にとっては大きな負担になります。たんぱく質は大豆など植物由来のものから摂り、食物繊維や炭水化物などをバランスよく取り入れることでカロリーオーバーにならないよう注意しましょう。大豆は必須アミノ酸だけではなく、ビタミン、カルシウム、カリウムという成分も豊富に含んでいます。納豆や豆腐などの大豆製品を積極的に食べるようにしましょう。

●食後の入浴は控えゆっくり横になる
食べたものは胃で消化され、栄養分が吸収されて肝臓に運ばれます。運ばれた栄養分を体で有効に使えるように肝臓が変換してくれます。食事のあとの肝臓は、フルで働かなければいけません。昔は食べてすぐ横になると牛になると怒られましたが、最近では肝臓の負担を軽くするためにも、食後は30分~1時間ほど横になるのが望ましいといわれています。

如何でしたか?特に高血圧や狭心症などにお悩みの方は積極的に肝臓の機嫌をとってくださいね。先人の智恵を拝借するなれば「肝(腎)心要(かんじんかなめ)」の中には【肝】の文字が入っています。それだけ大事だということをご理解いただき、皆様に元気に本格的な春をお迎え頂ければ幸いです。

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