2011.3.15更新
現在懸念されております放射線被害の予防に関して、「ヨウ素剤の代わりにうがい薬」などと根拠ない情報が氾濫しております。
誤った情報は逆に健康被害を引き起こす可能性があり、大変注意が必要です。この度、杏林予防医学研究所 山田所長(ページ下にプロフィール)より、『放射能汚染に対しての栄養療法』について緊急提案をいただきましたので、取り急ぎご紹介いたします。
各位
この度の地震により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
被災地の皆さまの安全と健康を願うとともに、一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
現在、福島第一原発の事故は予断を許さない状況のようです。高いレベルでの放射能汚染は懸念を超えて広がっております。日本全国の皆様の健康を留意し、栄養面からの予防及び治療効果も含めまして、急遽提案させていただきます。
私はミネラル栄養学の研究を行ってきた関係で、重金属(水銀、鉛、カドミウム)の栄養学的解毒法として、含硫アミノ酸についても研鑽を進めてきました。
以前、自閉症の子どもにおいて有害重金属除去として含硫アミノ酸の摂取が有効であることを、学会で発表したことがあります。また含硫アミノ酸は重金属だけでなく、放射性物質を防御することも知られています。
含硫アミノ酸にX線や放射線の害を防ぐという論文が数多くあります。
一般にアミノ酸はタンパク質を合成し放射線に被曝して損傷した組織を修復する材料となります。中でも含硫アミノ酸のシスチン、システインは放射線に被曝した組織に対する抗酸化能が高いことが知られております。
さらに同じ含硫アミノ酸のタウリンに放射線被曝により尿中排泄量が増えることから、 マウスによる実験を行ったところ、放射線被曝に対する生存率が高まることがわかりました。
栄養素は次の通りです。
◎タウリン
◎含硫アミノ酸のシスチン、システイン
◎MSM(メチルスルフォニルメタン)等含硫アミノ酸系
これらにつきまして、最大限の備えを行うことが必要であると考えます。
【含硫アミノ酸】
大腸菌並びにマウスのγ線照射に対する含硫アミノ酸
誘導体の防護,増感効果に関する研究
川崎医療短期大学放射線技術科
西村明久 (指導:岡山大学医学部放射線医学教室 青野要教授)
(内容抜粋)
放射線防護物質の発見以来1,2),各種の含硫化合物が防護効果を持つことが知られている.例えば,Cysteamine(MEA)やGlutathioneのような生体成分は強力な放射線防護効果を持つ興味ある化合物3~7)である.
~中略~
著者はこれまで,マウスのγ線照射に対する含硫アミノ酸導体の影響について一部明らかにしたが11),一般に含硫アミノ酸は放射線感受性が高いことから,低線量γ線による分解機構の検討,大腸菌とマウスに対するS-alkyl-L-cysteine誘導体の放射線防護ならびに放射線増感効果の比較,さらにそれ等投与薬剤のマウスに対する毒性など放射線化学,放射線生物学および放射線医学的見地より総合的に報告する.
(詳細は下記PDFをご覧ください)
http://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/file/16345/20100212043518/98_827.pdf
【タウリン】
タウリン 輸液栄養ジャーナル(JJPEN)Vol.21 No.7
東京大学医学部附属病院 手術部 齋藤英昭
東京大学医学部附属病院 腫瘍外科 池田重雄
防衛医科大学 第1外科 橋口陽二郎
「血中タウリン値が低下する病態として、手術侵襲、外傷、癌、敗血症、強力な放射線・化学療法などが知られている。われわれの検討では、術後合併症を発症した肝硬変依存肝切除術後やクローン病でも血中タウリン値が著明に低かった。
これらの病態ではタウリンの合成異常、体内需要の増加、外部からの供給の低下が相まって、血中タウリン値が低下すると考えられる。」
静岡県立大学 食品栄養科学部教授 横越英彦
http://sfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/express/newspaper/taurine10.html
「よく知られていることとして、放射線被ばくにより白血球の著しい減少が起こるが、その際、尿中タウリン排せつ量も顕著に増加する。放射線被ばくに対するタウリンの効果をマウスで検討した結果、生存率が高まったので、タウリンの防御作用が推測される。」
かなり厳しく苦しい時期が続くものと思いますが、第一に健康を優先してこの危機を乗り越えて頂きたいと願っております。
2011.3.15
杏林予防医学研究所 山田豊文(やまだとよふみ)
杏林予防医学研究所所長
米国公益法人ライフサイエンスアカデミー主宰
YMF研究会理事長
代表的な著書
『細胞から元気になる食事』(新潮社)
『「食」を変えれば人生が変わる』(河出書房新社)
『親子で学ぶ頭のよくなる栄養事典』(国土社)
『脳がよみがえる断食力』(青春出版社)
『病気がイヤなら「油」を変えなさい―危ない“トランス脂肪”だらけの食の改善法』(河出書房新社)他
※一部書籍は韓国、中国、台湾でも翻訳されています