妊娠期の食事について
偏食を避け、バランス良く食べましょう
妊娠期の栄養は母体の健康、胎児の発育だけではなく、その後の分娩、産後、授乳にも影響します。十分な胎児の発育と、母体の血液の増加、分娩時の体力の消耗などに備えて、バランス良く質の良い食事を摂る事が大切です。
たとえば、妊娠さんの多くは貧血といわれていますが、いくら鉄剤を投与しても、それを取り入れるためのたんぱく質やビタミンが不足していれば貧血は改善されません。鉄分だけでは血液はつくられません。それぞれの栄養素が助け合うことで、身体の中で良い栄養状態を保ってくれます。好きだから、身体に良いからといって一つの食品に偏ることなく、いろいろな食品をまんべんなく摂りましょう。以下の「妊娠中にとりたい栄養素」を意識したバランスがとても大事です。
《妊娠中に摂りたい栄養素》
1.ビタミン・ミネラルをたっぷりとりましょう。
葉酸
妊娠時における葉酸の不足が胎児に障害をもたらす可能性があることから、厚生労働省は特に妊娠を希望している女性に対し、1日に400μgを摂取することを呼びかけています。少なくとも、妊娠の1ヶ月前から葉酸を摂取することが理想です。
※サプリメントで摂取する場合は食物由来の天然型葉酸(葉酸塩 folate)を摂るようにしましょう
マグネシウムとビタミンB6
タンパク質の代謝を促進する栄養素です。
タンパク質代謝が正常に行われていないことで起こる妊娠高血圧症候群を予防します。また、浮
腫や胃の筋肉のけいれん、つわりの症状を防ぎます。
ビタミンA
胎児の成長に必要な栄養素です。抗酸化栄養素として、細胞の老化や活性酸素による害を防ぎます。※ビタミンAには植物性のβカロテンと動物性のレチノールがあり、βカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換してくれますが、動物性レチノールは摂りすぎると過剰症が出ることがあるといわれています。動物性レチノールは摂りすぎに注意しましょう。
ビタミンC
ストレスを軽減して、早産を予防します。
ビタミンE
ホルモンバランスに重要で、胎盤の血行を改善し、正常な受胎と妊娠を維持します。亜鉛、マグネシウム、カリウム、不飽和脂肪酸と共に筋肉を強く保ちますので、安産のために大切な栄養素です。
ビタミンK
血液の凝固に役立ち、出血を早く止めます。不足すると、胎盤中の出血が起こりやすくなります。
カルシウム
神経過敏、不眠症、筋肉のけいれんに関係する栄養素です。痛みの感受性を減らし、分娩時の痛みを和らげます。
鉄
母体と胎児の貧血を防ぎ、出産時に過剰に血液が失われるのを防ぎます。また、早産の予防のためにも大切な栄養素です。
2.良い脂質(オメガ3必須脂肪酸)をしっかりとりましょう
シナプスの部分には特にオメガ3必須脂肪酸が必要で、オメガ3がたっぷり含まれているほど、情報の伝達がスムーズに行われます。赤ちゃんがお腹の中にいる時からオメガ3必須脂肪酸の摂取に注意することで、頭の良い子が産まれやすいと言われています。また、オメガ3の摂取量が少ないと、産まれてくる子供の総合学習能力が約5倍低くなるという研究結果もあります。
【妊娠期の食生活のポイント】
次に、それぞれの妊娠期に応じた食生活のポイントを見てみましょう。
<妊娠前期(~15週)>
身体の変化
・つわりが始まる(12~15週あたりでおさまる)
・ホルモンの作用で基礎代謝が上がりだす
・赤ちゃんの主要器官がほぼできあがる
妊娠前期・食生活のポイント
つわりで思うように食べられないときは無理に食べる必要はありません。あまり堅苦しく考えず、口にできるものを摂ってください。冷たくてにおいの少ない、酸味の効いたものが比較的楽に食べられるようです。ただし、脱水状態にならないように水分の補給は忘れないようにしてください。また、マグネシウムとビタミンB6がつわりの症状を和らげるといわれています。
<妊娠中期(16週~27週)>
身体の変化
・体重が増え、お腹が目立ってくる
・足がむくんだり、静脈瘤ができたりする
・貧血になりやすい
妊娠中期・食生活のポイント
つわりの時期を過ぎたら、食欲にまかせず、バランスの良い食事を心がけましょう。妊娠中は2人分食べても良いという考えは間違いです。体重増加は理想体重の7~10kgを目安にし、この時期から肥満に注意して下さい。
赤ちゃんの発育が最も活発な時期なので、からだをつくるたんぱく質、血液をつくる鉄分を十分に摂りましょう。また、貧血予防のためには鉄分だけでなく、ヘモグロビンの合成に必要なたんぱく質、ビタミンB6、B12、葉酸、ビタミンC、銅なども大切な栄養素です。
<妊娠後期(28週~39週)>
身体の変化
・胎児の成長により、胃腸が圧迫
→胃腸の働きが悪くなるので、胃もたれや便秘になりやすくなる
妊娠後期・食生活のポイント
この時期は、急な体重増加や妊娠高血圧症候群に注意が必要です。(妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降に高血圧がみられる、または高血圧にタンパク尿を伴う場合のいずれかで診断されます)
予防のためには、塩分とエネルギーの摂りすぎに注意することが最も大切です。インスタント食品や塩辛い食品・脂質の多い食品は控えめにしましょう。また、高血圧予防にはマグネシウム、カリウム、レシチン、タウリンなどの栄養素も不足なく摂取することが大切です。
参考:「上手なビタミンミネラルの使い方」 福井透著より