第27回 運動と栄養について~スポーツコンディショニングの観点から~

2010年6月更新分

皆様こんにちは。風薫る爽やかな日が続いておりますが如何お過ごしでしょうか? 今回の健康トリビアは「運動と栄養補給について」というテーマでお届けします。近年、ダイエット志向や健康志向の高まりから、ジョギングやスポーツをされる方が増えています。ここ東京でも、皇居や神宮球場の周りにはランナー達が大勢いらっしゃり、近隣には簡易シャワー施設なども出来ているようで、ジョギングをするカップルの写真仕事帰りに一走りして、帰宅につくというのが一種の流行のようになっています。確かに、適度な運動は健康と美容にとって大切な要素なのですが、激しい運動は活性酸素の増大を招き、老化や病気の原因となってしまいます。折角、良かれと思ってはじめてみたものの、体調を崩す原因となってしまったら、本末転倒ですよね。そこで、今回はより健やかに楽しく身体を動かされることを願って、運動時の正しい栄養補給についてご説明して参りたいと思います。

【肉の食べすぎはスタミナを下げる!?】

食物の栄養素を大きく分けると、タンパク質、糖質、脂質の3つになります。これらの栄養素を三大栄養素といい、いずれもエネルギー源としてとても大切な働きをしています。中でもスポーツ時の栄養補給で注目されがちなのが、筋肉の主成分となる「タンパク質」ではないでしょうか?
そして、以前から根強く認識されているのが、「肉を食べればスタミナがつく」「肉サーロインステーキの写真は最高のタンパク源」ということ。しかし、食事で摂取したタンパク質は体内で消化されてアミノ酸となることで初めて利用されるのですが、肉で必要なアミノ酸を摂取しようとすると、必ずといって良いほど脂肪を摂り過ぎてしまうだけでなく、タンパク質自体の過剰摂取による弊害も出てきてしまいます。高タンパク質の構造は複雑なため、体内での分解や代謝に大きなエネルギーを必要とします。また、エネルギーとして使われた後の代謝副産物として、毒性のつよいアンモニアが発生します。そして、アンモニアは肝臓で解毒され、尿素に変わり最終的には腎臓でろ過され、尿として排出されるという仕組みです。つまり、タンパク質を摂りすぎると肝臓や腎臓に大きな負担がかかってしまいます。また、動物性食品の摂りすぎは血液を酸性に傾くかせることから、それを中和するために血液中にカルシウムを放出する作用(=脱灰)が働き、骨折や腰痛、筋肉のけいれん、肉離れなど運動能力低下に直接影響を及ぼすことにつながります。つまりは、肉の摂りすぎはかえってスタミナを消耗するといえるのです。

【タンパク質と同時に摂りたい栄養素】

◎マグネシウム、亜鉛、ビタミンB群をしっかり補う。
これらの栄養素はタンパク質の代謝に欠かせない栄養素です。スポーツや運動をされるに当たり、タンパク質の摂取は重要であることは事実ですが、むやみに増やすよりも、代謝を高めるマグネシウムや亜鉛、ビタミンB群などの栄養素を不足させないことがより重要なのです。また脂肪などと結合している、肉や乳製品、卵などの動物性タンパク質を多く摂るよりも、米や大豆といった植物性のタンパク質をバランスよく摂ったほうが、必要な栄養素を補え、身体の負担を最小に抑えながらエネルギーに変えられるために、運動効率もあがるというわけなのです。

【運動は炭水化物がカギ。質と量にこだわろう】

持久的な運動でスタミナが続かない、トレーニングをしても筋肉がつかない、運動に集中できない、力が入らないとお感じの方は、実は炭水化物の摂取量や取り方に問題があるかもしれませんPFC比率の目安。特に運動後に炭水化物をどう摂るかで、身体づくりや疲労回復の度合いが大きく変わってくるのです。
三大栄養素が摂取エネルギーの総量に占めるバランスを示す指標のひとつに「PFC比率」というものがあります。これを見ても、まず炭水化物を一番多く摂らなければならないことは明らかですね。瞬発力を必要とするスポーツ選手になると、炭水化物の摂取目安は食事全体のおよそ60%以上、さらにマラソンなどの持久力系のスポーツでは70~80%は必要になるといわれています。つまり、運動やスポーツをするうえで最も重要なエネルギー源なのです。

●どんな炭水化物が理想なの?
炭水化物は体内で消化・吸収された後、グリコーゲンという形になって肝臓や筋肉に蓄えられ、主にエネルギー源として利用されます。ではどんな炭水化物が理想なのでしょうか?炭水化物の最小単位はブドウ糖や果糖などの単糖類で、全ての炭水化物がこの単糖類の組み合わせによって構成されています。1個~数個の結びつきによって出来ている「単純炭水化物」である砂糖や、パンや麺類といった精製食品を過剰に摂ると、消化・吸収があまりに早く行われるため、血糖値が急上昇します。すると、過度の急上昇を抑えるために、インスリンが過剰に分泌され、反対に低血糖の状態になり集中力の低下や脱力感などの症状を起こし、運動能力を低下させる原因になってしまいます。反対に、多数の単糖類が複雑に結合している、穀物や豆、イモ類などの「複合炭水化物」をとると体内で分解して吸収するまでにある程度時間がかかるので、長時間にわたって安定したエネルギー炊き立ての玄米ご飯と味噌汁 朝食イメージの写真をつくり、血糖値に変動も緩やかなのです。つまり、ここでも米や味噌、豆腐といった伝統的な日本食は運動する上でも理にかなった食事といえるのですね。そして、同時にマグネシウム、亜鉛、クロム、ビタミンB群、クエン酸などとう、糖代謝をサポートする栄養素を一緒に補給することが重要です。(※但し、激しい運動やトレーニング直後の疲労回復目的の場合は、吸収の早い単純炭水化物が適しています。)

【活性酸素の害から身を守る】

最後に、運動やスポーツをするにあたり避けては通れない「活性酸素」がテーマです。激しい運動は細胞の「サビ」=酸化につながり、老化やあらゆる病気の原因になります。1回の呼吸で取り込んだ酸素の1~2%が活性酸素に変化しますが、そもそもこれは殺菌や異物の破壊、情報伝達などのために作られ有益な働きをするものです。しかし、過剰に働いたり大量に発生したりすると敵も味方も関係なしに攻撃を始め、健康な細胞を傷つけてしまうのです。活性酸素はストレスや喫煙、激しい運動、紫外線、飲酒、食品添加物などの原因で大量発生し、あらゆる病気の8~9割に関わっているといわれています。ですから、健康的に運動やスポーツを楽しむには、活性酸素のダメージを最小限にとどめる工夫が必要です。ビタミンA(βカロテン)、C、Eやセレン、亜鉛、ポリフェノール類といった効酸化作用のつよい栄養素を積極的に補うようにしましょう。また、近年レスベラトロールピクノジェノールなど効酸化物質の研究がさかんにされていますので、自分にあったものを上手に補っていくことが大切です。
いかがでしたか?是非参考にしていただき、楽しみながら健康的に身体を動かされてくださいね!

(参考文献:杏林予防医学研究所 予防医学ニュース)

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